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解説

黄金時代の幕開け -2

2004年6月6日 日曜日

ピアノ協奏曲第14番変ホ長調KV449とピアノ協奏曲第17番ト長調KV453は、モーツァルトの弟子である、皇王室帝国枢密院代表ゴットフリート・イグナーツ・フォン・プロイヤーの娘、バルバラ・フォン・プロイヤーのために作曲されたため〈プロイヤー協奏曲〉と呼ばれている。このピアノ協奏曲第14番変ホ長調KV449は2月9日に完成したが、アラン・タイソンの自筆譜と使用五線紙の研究では、1782~1783年に作曲された〈ヴィーン協奏曲〉第12番イ長調KV414(385p)、第11番ヘ長調KV413(387a)、第13番ハ長調KV415(387b)と同時期に書き始められたと考えられている。第一楽章の170小節まで書き進んだところで作曲が中止され、1783年の12月、ザルツブルクからヴィーンに戻ってから、テナーのためのアリアKV435(416b)のスケッチが書かれた五線紙を使用して再開された。その後、さらに全く別の新しい五線紙で続きの部分が作曲され、2月9日に完成した。ピアノ協奏曲第14番変ホ長調KV449にはオーボエとホルンはアド・リビトゥム、すなわち演奏の際にこれらの管楽器を入れても入れなくてもどちらでもよいという指示がモーツァルトの手によって書き込まれているが、これは第11番から第13番の〈ヴィーン協奏曲〉と全く同様である。1783年4月26日、モーツァルトがパリの音楽出版者ジャン・ジョルジュ・シベールにあてた手紙で

私は三つのクラヴィーア協奏曲を完成しております。これはフル・オーケストラで演奏できますし、オーボエ、ホルンをつけても ―― あるいはたんに四重奏でも演奏可能です。

と、伝えている。自作全品目録の第一曲目は、四重奏としても演奏可能な室内楽的なピアノ協奏曲であったが、本日演奏する自作全品目録の第二曲目、ピアノ協奏曲第15 番変ロ長調KV450 は、かなり性格が異なっている。管楽器の合奏から開始されるこの斬新なピアノ協奏曲は、オーケストラにピアノの伴奏を務めさせるだけでなく、対等の役割を演じさせ、モーツァルトの黄金時代の幕開けを予感させるものである。

1784年3月3日、モーツァルトがザルツブルクの父に宛てた手紙を引用しよう。

ほとんど手紙が書けないのをお許しください。でも、絶対に時間がないのです。というのは、今月の17日から四旬節に毎水曜日3回、トラットナー邸のサロンで予約演奏会を3回開きますが、これはもうすでに100人の予約者があり、当日までにはまだ軽く30人は集まるでしょう。 ―― 今年中に、おそらく2回、劇場で演奏会を開きます。 ―― そこで、ぼくがどうしても新曲を演奏しなければならないことが想像していただけるでしょう。 ――したがって書かざるをえません。 ―― 午前中は全部、生徒たちに時間を使ってしまいます。 ―― そして、夜はほとんど毎日弾かなくてはなりません。以下、ぼくが確実に弾かなくてはならない演奏会の全リストをごらんください。

 


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