昼過ぎまで自由行動なので、とりあえずヴィーンの市街を一通り眺めようとリンクという環状道路を走っている路面電車に乗りました。ここを一周すると、博物館や国立歌劇場などの主な建物を見ることができます。あまり時間がないのでこれでヴィーンは見たことにして再びケルントナー通りに行きました。
ドブリンガーに楽譜を見にいくと壁一面に風呂屋の下駄箱のようなものがあり、この中に楽譜が入っているようです。勝手に出してみていると、店の人がきて「セルフサービスじゃない。勝手に見るな」と怒られてしまいました。店の広さは心斎橋のヤマハよりは狭くて、神戸楽譜より少し広いくらいですが、楽譜を自由に見られないので、冷やかしはできません。きちんと欲しいものを決めてからいった方がいいようです。
予想外に早く楽譜屋を出ることになってしまい、シュテファン寺院を見ながらフィガロハウスに向かいます。しかしこの時期は閉鎖されていて外から見るだけです。少しはおみやげを買わなくてはいけないので地図の専門店を探してヴィーンの市街を描いた絵地図を5枚仕入れました。通りのファーストフードで昼食をとりホテルへ戻りました。
演奏会場の教会へ向かうバスの発車時刻に遅れるとまた運転手に怒られるので、早め早めに行動しますが、やはり団体行動ではどうしても時間遅れが生じてしまいます。またまた機嫌の悪い運転手。演奏会終了後に迎えにきてもらう時間も30分ほど余裕をみて言いました。
演奏会場のミノーリテン教会はザルツブルクのドームとはちがい、小ぶりの普通の教会です。どこで演奏するのかと思っていたら、なんと祭壇でやるということで、少しびびってしまいます。
曲目は、
交響曲第5番
ディベルティメント第1番
カッサシオン第1番
セレナータ・ノットゥルナ
ハイドンの交響曲第70番
アンコールは「鉄腕アトム」と「あこがれの郵便馬車」の2曲(ともに井上雅勝編曲)を予定していましたが、ノットゥルナが終わった時点で少し時間オーバー気味で、バスの時間に遅れるとまた運転手に怒られるので、急遽「アトムはなし」ということにしました。ところが「郵便馬車」を演奏していると、それまであまり気乗りしない表情で聞いていた観客たちの目が一斉に輝きはじめ、スタンディングオベイションまで出てしまいます。やはり日本人奏者には日本の曲があっているのでしょうか。しょうがないので「アトム」もやり、逃げるようにかたづけてバスの待っている場所へ走りました。
打ち上げは再びグリンツィンクのホイリゲへ。今度はバイオリンひきのいる店でした。弓の毛を一本抜きそれを弦に結びつけて、指先で根本から先の方へ引っ張りながら摩擦で音を出して曲をひくという技を披露してくれました。我らがコンマス氏が「この芸はいただきだぜ」という目で見つめていたのを私は見逃しませんでした。