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解説

ディヴェルティメント ニ長調 KV 251

2011年10月9日 日曜日

大阪モーツァルトアンサンブル 武本 浩 (第53回定期演奏会より)

モーツァルト家と親しかった、ジークムント・ハフナー2世は、妹マリーア・エリーザベトの婚礼の前夜祭(1776年7月21日)の音楽を委嘱した。いわゆるハフナー・セレナーデKV 250である。そのわずか4日後、7月25日に姉ナンネルのためにディヴェルティメントKV 251が作曲される。7月26日はナンネルの霊名の祝日で前夜に祝事が行われた。そのための音楽である。1778年7月3日、母マリーア・アンナと旅行中のパリで母と死別したモーツァルトが7月18日、20日付で父レーオポルトに宛てた手紙に以下のように記されている。最愛の母を異国の地で失った直後の家族の絆が感じられる。

お祝いの言葉がこんなに遅くなってしまったことをどうぞお許しください。――でも、やはりお姉さんにちょっとした前奏曲を贈りたいと思ったのです。

封筒の内側には、姉へ追伸が記されている。

最愛のお姉さん!

あなたの霊名の祝日がきましたね!―(中略)―数年前のように、音楽の贈り物をプレゼントできなくて残念です。――でも、心を同じくする二人の情愛こまやかな姉弟が、それぞれ考えたり思ったりしていることをまた心おきなく話し合える仕合せな時が、そう遠くないことを期待したいものです。

それに対し、9月10日付の父からモーツァルトに宛てた手紙に、追伸として姉から返事があった。

前奏曲のことで私、自分でお礼を言いたいと思いますし、あなたの霊名の祝日にザルツブルクでお祝いしたいと思っています。

姉のために作曲したディヴェルティメントであるが、フィナールムジークとしても使用されたらしい。フィナールムジークは、8月の初旬の水曜日に行われるザルツブルク大学の学生たちが専門課程に進む前に、2年間の教養課程の最終試験終了後に大司教と教授たちに感謝をこめて演奏される卒業演奏のことである。ザルツブルクに住む父レーオポルトからマンハイムに旅行中の息子に宛てた1778年11月23日付の手紙に、以下のようにこのディヴェルティメントのことが記載されている。

7時には宮殿に行って、フィアーラはコンチェルトを一曲吹きましたが、初めのシンフォニーはおまえのフィナールムジークのシンフォニーで、オーボエのソロつきのアンダンテとトリオを持っています。

 


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